毎月4千万人が利用する日本初、最大級のQ&A方式の情報交換サイト「OKWave」を運営する『株式会社オウケイウェイヴ』。ロゴの赤いハートマークが印象的な同社は「“ARIGATO”で世界をつなぎ幸せで満たす」ことをミッションとし、現在ソーシャルメディア事業、エンタープライズソリューション事業、ナレッジマーケット事業の3本柱で事業を展開している。
2013年にはGreat Place to Work(R) Institute Japanが発表した「働きがいのある会社」ランキング(従業員25~249名部門)にてベストカンパニーに選出されるなど、常に従業員にとって働きやすい環境を整え、事業発展に寄与することで、ミッションの実現を目指している。今年設立15周年を迎えた同社が創造する「働きやすい環境」とはどのようなものなのか。そこに至った経緯と背景も含め、ピープル本部本部長 辻次謙秀氏よりお話を伺った。
なぜオフィス環境に投資したのか
1999年に東京都町田市で事業をスタートさせた同社。その後、度重なる事業拡大に伴い、拠点を渋谷や新宿に移し、現在は恵比寿に東京本社オフィスを構えている。今回で4度目となる移転を経て、働きやすいオフィス環境はどのように変化してきたのか。
辻次氏:恵比寿に移転をする前は渋谷にオフィスがあったのですが、2006年の上場直後、渋谷のオフィスではスペースが狭くなったので、移転をしようということになりました。創業前に代表が二年ほどホームレスをしていた時に活動していたのが青山・表参道・渋谷だったので、その近辺が良いだろうということで探していて、ここを見つけました。
我々のバリュー(価値)の中には「ありがとうが生まれるコミュニケーション」というのがあるので、ただやりとりがすぐにできるというだけでなく、やりとりをして「ありがとう」と言える環境を意識したオフィス作りに努めています。
オフィス環境変革後の変化や反響
移転して環境が変わる毎に「透明性」が高くなり、徐々に社員同士の距離感が近くなっている印象を受ける同社。以前から変わらない「ありがとう」が言える雰囲気作りを継承しながら変革したオフィスに、どのような反響が寄せられているのだろうか。
辻次氏:お客様の反響としては、ぱっと見で覚えて頂けるということですね。初めていらっしゃる方は、なかなか社名とやっている事業が一致しない方もいらっしゃいますが、「透明のガラス張りの会社ね」とすぐに思い出して頂けることはかなり大きなメリットになっていると思います。ちなみに、移転前の渋谷のオフィスの時は「ペットボトルの会社ね」と言われていました(笑)。まず記憶にしっかりと残って、そこから会社名やサービス名を理解して頂いてファンになって頂くこともあるので、オフィスのインパクトは非常に重要だと思います。以前からこの「透明感」は引き継いでいますので、我々はもう慣れてしまって違和感がありませんが、採用で面接にいらした方々はその透明感に驚かれる方が多いですね。良いお声が多いので、やはり「見える」ということが安心感を与えるのではないかと思います。
どこまでも限りなく透明なオフィス
エントランスに足を踏み入れた時から、ミーティングスペースが全て「透明」であることに非常にインパクトを受ける。ミーティングスペースということで物理的に仕切られてはいるが、全てホログラムシートで仕切られているため全く圧迫感を感じさせない作りになっている。同社のバリューにもある「ありがとうが生まれるコミュニケーション」を実現するためのオフィスの仕組みとはどのようなものなのか。
辻次氏:移転が決まってからは、代表の兼元がコンセプトを考えました。デザインは移転前のオフィスも手掛けて頂いた、設計士の夏目さんに今回もお願いをして計画が進んでいきました。元々同級生ということもあり、代表の考えや思いを全て理解して頂いているので、我々も信頼しきっているという関係性なんですよね。
今回の移転で一番重視した点は、やはり「透明性」というところです。我々はQ&Aサイトを運営すると同時に、企業向けの製品や個人情報も扱っています。そこで、このような「透明性」の高い社内環境で仕事をしている様子をお客様に見て頂くことで、どこを見て頂いても大丈夫ですよ、という暗黙のメッセージになるわけです。渋谷の時は同じフロアに執務スペースがあったので、社員の仕事風景も見て頂けていましたから、社内コミュニケーションも活発であるというところを含めて見ていただくために、今回も風通しの良さを非常に大事にしました。全て見えてしまうので、その分常に掃除をきちんとしておかないといけないのですが(笑)。
また、2~3年前に大きく変化した点がありまして、執務スペースが下の階(4階)に移動したんです。さすがに人が増えてきたので下を借りたのですが、今までずっとワンフロアで過ごしてきたので、2フロアになったらやはりコミュニケーションが取りづらくなってしまったんです。その時にたまたま4階の隣の部屋が空いたので、そこを借りて壁を取っ払ってワンフロアに戻したという感じです。それでここ(5階)はコミュニケーションの場として活用させようということになりました。
執務スペースにも一切パーティションがないんです。役員席3つもガラス張りになっていて、社長と副社長の部屋も透明なので、何かあればいつでも気軽に声が掛けられます。前のオフィスでは席と席の間にペットボトルのパーティションを設けていたのですが、ここに来た時はそれも無くしてよりフラットな環境にしました。僕らは古株ですが、あまり違和感はないですね。
他に弊社ならではの特徴としては、「ありがとうが生まれるコミュニケーション」という我々の価値に基づいて、ミーティングルームの名前に世界各国の「ありがとう」を付けていることですね。ここ(5階)も執務スペース(4階)も共通です。これは社内公募で決まったアイデアなんです。
今後取り組みたいオフィス環境づくり
ちょっとした社内環境の不具合は、毎月意見を求める公聴会を行って、微調整をしながら整備しているという。社員の働きやすさを常に追求し続ける同社の、今後取り組みたいオフィス環境作りについて伺った。
辻次氏:この場所は居心地が良くて、誰もが恵比寿という場所を気に入ってるんです。このビルも駅からそれほど遠くないですしね。さらに良いことに、このビル自体は古いんですけど、移転時から廊下やエレベーターの内装がどんどんリニューアルして良くなっているんですよ(笑)。ですので、7年経ちますけれど移転をする理由が無くなってきたんです。そういう意味では良いビルに入ったなと思います。
今後は「多様性」が必要になってくると思うので、いずれは、いつでもどこでも仕事ができる環境を作り上げていきたいと思っています。オフィスでも、外でも変わらず仕事ができる状況であることが重要なんです。その一方で、やはり対面で会議をする大切さもあると思いますので、集まるスペースも考えて残していきたいと思っています。実は、今も色々用意して取り組んでいるんです。
また、時間帯によって集中したいというニーズも出てくると思うんですね。今はライブラリースペースに個別の机があって、そこを集中スペースにしていますが、フラットなコミュニケーションが可能な環境も保ちながら、個別に集中できる環境にも対応できるオフィス作りを今後も続けていきたいですね。コミュニケーションだけは常に大事にしていきたいと思います。
Pick Up “ここが、オウケイウェイヴらしさ“
コミュニケーションを大事にしている同社では、社内交流が非常に多く行われている。その充実ぶりをご紹介。
■「ありがとうカード」
普段から「ありがとう」という言葉が多く飛び交う同社では、ちょっとした感謝の気持ちを「ありがとうカード」というものに込め、社員同士がオンライン上で送り合っているという。基本的に全社員に公開が原則となっており、誰がどんなメッセージを送ったのかを見ることができる。嬉しいことを全員で共有するという点が非常に同社らしい取り組み。毎週、その週に一番「ありがとう」を送った人が表彰されるのだそう。
■濃密な月曜の会
毎週月曜日は社内交流が最も盛んに行われている。
・「今週の誕生日」:朝礼で社長からメッセージと共に誕生日プレゼントを受け取って抱負を語り、握手をして写真撮影をするというもの。200名近い社員がいる同社では、毎週誰かしらの誕生日を皆で祝うのだとか。
・「グッド&ニュー」:月曜の夕方、社長をはじめ役員も混ざり、6~7名のグループで先週あった良かったことや嬉しかったことを発表し合い、共有する会。メンバーはくじ引きによって決められるので、毎回違うメンバー同士で交流が図れる。一人30秒という限られた持ち時間の中で発表される良いニュースを全員で共有することで、また一週間がんばろう!という意味が込められている。この月曜の会の後は、社長も含め、全社員で掃除をするという昔からの文化が根付いている。
■懇談会
社内の決め事は社員の意見を聞いて積極的に取り上げているという同社では、社長と辻次氏が、誰でも参加できる「懇談会」を毎月開催している。社長は主に事業関係、辻次氏は主に社内環境などの細かい要望と担当を分け、月に一度社員から意見を吸い上げ、次回までにできる限り対処するということを繰り返しているのだとか。毎回平均で社長のところには2~30名、辻次氏のところには10名近くの社員が集まるのだとか。
そこから実際に導入された例としては、空調に関する工夫や「フリードリンク・フリーフード」といって自販機の飲み物が安く買えたり、朝にバナナを提供したり、小腹が空いた時に外に出なくても社内で調達できるように「オフィスグリコ」を導入するといったことなどが挙げられる。毎回工夫をして、社員の希望に応える努力をしているのだそう。
■社外イベント
企業向けの製品やサービスを取り扱っているため、外部から講師を招いてシステム導入のためのセミナーや講演会を行うこともあるそう。他にサイトのユーザー向けイベントも行う等、フラットな空間を活かして外部を交えた発信も行っている。
Creator’s Eye ナツメトモミチ / 代表 設計士 夏目 知道氏
夏目氏:前回の渋谷オフィスも手掛けさせて頂き、今回の移転も担当させて頂きました。今回のご要望としては、社員とゲストの活動が見渡せるエントランスとミーティングスペースにしたいという点と、セミナースペースを様々な方とのコミュニケーションが生まれるフリースペースにしたいという点でした。見通しの良さと、コミュニケーションがキーワードということで、セキュリティーエリア等の必要なエリアを透明なガラスパーティションで区分した上で、ホログラムシート・ファブリックブラインド・カーテンなどで見渡せる範囲を制御するレイヤーヴァリエーションを考えてご提案しました。
オウケイウェイヴ様のカラーは理解していましたので特にこれといった苦労はありませんでしたが、見渡せる範囲の制御設定に関しては注意を払って慎重に検討しました。家具に関しては、インテリアの空間要素が確定した時点で、「透明感」を損なわない軽やかな形状のものを選ぶようにしました。
恵比寿オフィスができてから、様々な方とのコミュニケーションが生まれる空間として、セミナースペースが実際に稼働し始めて機能している点が特に非常に喜ばれていますね。今後、ゲストへおいしい飲み物を提供するドリンクカウンターなどを設けてはどうかと個人的には考えています。前のオフィスからの過程をずっと見てきていますので、この環境を活かしてもっとコミュニケーションが生まれるように、一緒に考えていけたらと思っています。夢が広がりますね。