ペットを対象にした「どうぶつ健保」を第一の事業柱としている『アニコム損害保険株式会社』。家族の一員として大切にされているペットの市場をいち早く開拓し、ペットの健康保険を取り扱うリーディングカンパニーとして実績を積み上げてきた同社は、2012年7月、新たに火災保険の認可を取得。今後はペット保険の更なる充実を目指しつつ、新たな領域にも事業を拡大すべく常に挑戦を続けている。そんな同社の社名は、「ani(命)+communication(相互理解)」から生まれており、“命あるものがお互いに理解し、ともに一つの目的に向かって力を合わせることで、これまで不可能と思われていたことが可能になる”という考えから、「ani(命)+communication(相互理解)=∞(無限大)」を企業理念として掲げている。ペット保険事業を柱にこの無限大の価値創造力を活かし、「ありがとう」を拡大しようと邁進する同社のオフィス環境作りについて、総務部長の大畑友香氏と人事部係長の上妻史保理氏にお話を伺った。
なぜオフィス環境へ投資したのか
2008年に営業を開始した同社は、「『涙』を減らし、『笑顔』を生みだす保険会社」を経営方針に掲げ、個性あふれる多様な人材から生まれる豊かな思いや発想を大切にし、新たな価値を提供できる人と組織づくりを目指している。そんな同社がオフィス環境に投資をした背景とは。
大畑氏:業容拡大と共に社員数が増えたことをきっかけに2年前に増床をしました。最初は2階のワンフロアと4階の半分だったのですが、その後新たに4階と5階を増床し、現在は3フロアになっています。人が増え、会社が拡大していくに伴って、オフィス環境も充実させないといけないなというのはかなり気を付けているところですね。
増床に伴い新設したところとしては、2階のみに設置していたリフレッシュスペースを、4階にも新たに設けました。また、今まで体を休めるスペースがなかったので、リフレッシュスペースの奥にベッドを備えた「休養室」(個室)を設けました。女性が多い会社なので、妊娠中の方や体調が優れない方でも、きちんと人目に触れないところで体を休めることができるようにという想いで作りました。組織自体がかなりオープンでフラットというところがあるので、オフィスもそれを体現していると思います。例えば、部署ごとのパーテーションが一切なかったり、会議は全てガラス張りの会議室で行われます。初めて来られる方には少し緊張させてしまうかもしれませんが、“誰がどこで何をしているのか”というのがわかるのは、このオフィスならではだと思います。
オフィス環境変革後の変化や反響
会社の規模が大きければ大きいほど、他部署との交流は少なくなり、同じ社内にいても名前も顔もわからない人がいるという話をよく耳にする。しかし、グループ会社総勢で500名近い社員がいるという同社では、会社間の垣根や雇用形態の垣根なども一切なくコミュニケーションが取れているため、社内の風通しがよく、上下関係も非常にフラットなのだとか。そんな同社のオフィスを見てみると、パーテーションなどの区切りが一切なく、会議室も全面ガラス張りという主だった特徴が見受けられる。オフィス環境を変革したことで、社内外からはどんな変化や反響があったのだろうか。
大畑氏:4階に新たに「リフレッシュスペース」を設けたことで、近くに飲食店がありつつも社内でお昼を食べることでコミュニケーションをとる方が多くなりましたね。「休養室」についても利用していただけているので、良かったなと思います。あと、4階にガラス張りの会議室が数部屋あるのですが、そのうちの1部屋を利用して、もう少し新しい取り組みをしてみないかという話が出たことをきっかけに、新たに「BRAINSTORMING ROOM」という部屋を設けました。主には当グループのデザイナーが新たなデザインを考える際に利用する部屋なのですが、本やハンモックなどいろんなものを置いてみて、そこでアイデアや議論をしたり、新しい使い方ができるように現在トライアル的な取り組みを行っているところです。現在のオフィスができてから結構経つのですが、またもし次にオフィスを見直したりするときには、社員数や社員の働き方も変わってきていると思うので、今チャレンジしていることが次のオフィス作りに活かせればいいかなと思っています。
上妻氏:オフィスが新しくなってから、社外の方にお越しいただくことも増えました。採用面接のときはこの全面ガラス張りの会議室で面接をさせていただいているので、選考を受ける方からすると緊張されると思いますが、通常面接に行くだけでは会社の中の様子までは見えないことが多いと思うんです。その点、当社は面接に来ていただいたタイミングで、どんな社員がどんな風に仕事をしているかというのを直接見ていただくことができるので、この環境が与える影響は大きいと思います。それによって、社員も見られているという意識が高まるため、良い緊張感が生まれます。そういうところもお互いに良い影響を与えられています。
働く環境を変えるということの意味
同社には「ジョブローテーション制度」というものがあり、多くの部署の業務を経験することによって、会社の全体像を理解し、経営の視点や幅広い知識・経験を身に付けることができるという。多くの企業では、異動というのはそう頻繁に行われるものではないが、同社ではそれが当たり前のように行われていることで、一人ひとりのキャリアアップはもちろん、組織としての活性化にも繋がっている。事実、この制度が社内コミュニケーションを促し、社員の働き方にも良い影響を与えている。そんな「ジョブローテーション制度」について詳しくお話を伺った。
上妻氏:ジョブローテーションの頻度は、大体1~2年に1回です。早い方だと半年くらいので異動するケースもあります。少し早すぎるというイメージを持たれるかもしれませんが、どのような仕事も全てどこかで繋がっているので、全体像を見て仕事の本質を理解するという意味ではとても良い制度です。誰しも仕事や環境に慣れてくると成長速度が徐々に遅くなる傾向にありますので、慣れてきた頃にあえて異動させることで、また新しい環境で努力し、成長できる「一人ひとりの成長を加速させる」という意味でのジョブローテーションだと思います。実際は、異動の時期が近づいてくると皆ドキドキしていますけどね(笑)。普段から異動が多い会社なので、それが良い意味で当たり前になっているという風潮があります。異動によりフロアが変わると雰囲気がガラリと変わりますし、周りにいる方も変わることでも雰囲気は変わりますからね。
あと、当社では部署ごとの引っ越しや席替えも多く行われています。頻繁に行われるため、中学や高校の席替えを思い出すこともあります。部署にもよりますが、3ヶ月に1回くらいはしているかもしれません。これもジョブローテーションの考えと同じで、同じ机でずっと仕事をしているとそれだけでマンネリ化してしまうので、新しい環境に変えるために、少し時間をかけてでも席替えをしています。また、当社は社長室もないので、社長の近くの席になると役職や年次に関係なく常に会社の動きを感じる話ができるという環境もとても刺激的です。席替えをすると社長の近くに来て話せるチャンスがある!と喜ぶ社員も多くいます。
当社は、手を挙げて挑戦したい!と言った時に周囲の社員皆が後押ししてくれる会社なんです。風通しが良く、上下関係もフラットなので、社長へプレゼンを直接行ったり、上司が部下の提案を積極的にに受け入れたりということも当たり前のように見受けられます。それは、このオープンな環境が生み出したものだと実感しています。
今後取り組みたいオフィス環境づくり
「保険」という形の無いものを扱う同社では、お客様に信用していただくためにも、“何も包み隠さず、見せる”ということをオフィスにも体現している。社内にデザイナーを抱え、社員からの声も吸い上げ、常にオフィス環境の変革を行う同社では、今後どのようなオフィス環境づくりを目指していくのだろうか。
大畑氏:社員のほとんどは動物好きなんです。ペット保険を広めたいという想いももちろんありますが、その根底には動物とのもっと幸せに暮らせる社会を作りたいとか、少しでも病気を減らしたいとか、一人ひとりが“夢”を持っている人ばかりです。日頃の業務を通じて、一人ひとりの“夢”をもっと探求し、実現していけるように、もっと時間を効率的に使えるようにしていかなければいけないという話はよくします。おそらく今後もっとその意識が加速していくと思うので、部内のメンバーのみで固まって作業を進める旧来型より、多くの部署の社員や様々な専門性を持った社員同士がコミュニケーションを取り合いながら、新しいものを生み出していける環境を創っていく必要があるなと思います。
今すぐ全部変えることは難しいですが、少しずつでも席の配置や仕事の仕方を変えていった方が良いと考えています。環境が変われば皆さんの働き方も変わると思うので、そこは総務が率先して取り組んでいきたいと思いますね。
また、社内には「意見箱」を設置しているので、そこに挙がった意見もうまく活用したいですね。社内全体がフラットということもあり、各部署のいろんな方から提案をいただくことも多いので、そういうものを加味しながら、次に何を作ったらいいのかを常に考えています。
Pick Up “ここが、アニコム損害保険らしさ“
■目標共有会
年度の目標を全グループ社員で共有し、目標達成に向けて団結力を高めることを目的とした「目標共有会」を年に一回開催している。「共有会」は他の会社でもよく見受けられるが、同社の場合は照明や音楽、ナレーション等を全て社員自らが担当し、“ロールプレイング”により部門ごとに目標発表を行うというから驚きだ。本番一ヶ月くらい前になると社内が熱気で溢れかえり、共有会当日も各部署による発表は笑いあり、涙ありで全員が一体となるのだとか。また、年度内の優秀者をMVPとして表彰する表彰式も開催され、全員でその功績を讃えるのもこの共有会のメインイベントである。
■アニコム大学
社内を大学に見立て、エクセルやパワーポイント、簿記などの基礎知識から専門知識までを学べる研修制度。社員が講師となり、社員が受講するという同社ならではのこの取り組みは、週に1回くらいのペースでコンスタントに行われている。働きながらスクールに通うことは時間の都合上なかなか難しいことだが、同社では、「社内で学んで吸収したことをまた社内に還元する」という意味で社内講師を立て、自由に自分が好きなことを学んだり、苦手なことを克服できるようにとこの取り組みを行っている。
講師は社外の方にお越しいただくこともあるそうだが、社内で講師役を立てることで、社員自らが「講師としても成長したい」と自分を高めるきっかけになっているのだとか。また、同社には獣医師が約70名いるため、専門的な知識を持つ社員から動物の知識を教えてもらえる機会もあるのだという。