「インターネットを通じて、世界をより良くする」をミッションとして掲げ、ゲーム事業をメインに、コマース・ライフスタイル事業、コミュニティ・メディア事業、広告事業等を展開している『グリー株式会社』。グリーという名前は、自分の知り合いを6人以上たどっていくと、世界中の人とつながりを持っているという仮説「Six De“gree”s of Separation」に由来する。ネットワークやコミュニケーションに代表されるインターネットの「面白さ・便利さ・楽しさ」を新しく生み出していく存在でありたい、というメッセージが込められている。そんな同社は2014年12月7日に創立10周年を迎え、更なる探求心と共に、また道なき道へと新たな一歩を踏み出した。
無から新しい価値を作ることが自分たちの仕事であるとし、「素晴らしいサービスを生み出すために素晴らしい会社を作る」ということをビジョンの一つにしている同社が考えるオフィス環境づくりとは、一体どのようなものなのか。管理統括本部ファシリティマネジメントチーム 野長兄一氏へお話を伺った。
なぜオフィス環境に投資したのか
2010年夏に現在の六本木ヒルズ森タワーに移転し、今年2014年にオフィス移転4年目を迎えた同社では、創立10周年を記念して、オフィス環境や制度面において新たな取り組みを実施したのだそう。「素晴らしい会社を作ることは、素晴らしいサービスを作るための第一歩」であると考える同社が、オフィス環境に投資をした理由とは。
野長氏:社内環境整備に関してですが、来客スペースについては比較的良いものを入れていこう、という考えが弊社ではベースになっています。一方で執務室に関しては、管理上あくまで機能性とシンプルさをベースに、物を揃えたり環境を整えたりしています。この軸はこの3年間全く変わっていません。お客様がいらっしゃる環境と執務スペースの環境を、対照的に分けているんです。
また、弊社の経営者たちは積極的に社員とコミュニケーションをとって下さる人が多く、常に私達の仕事効率を考えて「こういう環境にしたい」というオーダーを下さるので、これまではほとんどがトップダウンの案でした。しかし、今回新たに二ヶ所、部屋が作られたのですが、こちらに関しては初めてボトムアップという形で実現しました。
そのきっかけとしては、2014年が創立10周年ということで、弊社のCTOが「会社をより良くしていくために何か案はないか」と全社員にアイデアを募ったんです。元々CTOが社内活性化を主導していて、「グリー=ものづくりの会社」という前提があり、どうしたらそれを促進できるか、障害になっているものがあれば少しでも取り除こう、という話で進められました。結果的には社員公募で200案ぐらい集まりました。その中でオフィス環境に関する項目がいくつかあったので、それを全てまとめてできたのが今回の新たな2部屋です。
10月のキックオフから二ヶ月間、週一のペースで皆で話し合いました。オフィス整備というよりは、「静かに仕事に集中できるスペースが欲しい」とか「ブレストできる部屋が欲しい」などかなり明確で具体的だったので、そこから各部屋ごとのプロジェクトチームに分かれました。皆自主的にプロジェクトに参加していました。
オフィス環境変革後の変化や反響
今回タイミング良く、新規施設のオープン初日に取材をすることができた。この箇所を除いては移転後の大きな変化は特に無いようだが、日頃から社内の細かい調整はしているのだそう。率直に意見を言い合う環境が、より良いオフィス環境作りへと直結しているようだ。創立10周年を機に新たに2部屋が追加された同社では、早くも社内からの意見が上がってきているとのことなので、その具体的な反響を伺った。
野長氏:社員はすごく色々なことをフィードバックしてくれます。優しい声だけでなく、厳しい声も…ちなみに今日オープンした部屋に関しては、「凄く良い!」という声が届いています。今までの働き方とは違う部屋を作ったことで喜ばれているので、良かったです。一方で、新たなスペースを作るのに、会議室などを犠牲するとそれに対するご意見を頂くこともあります。
また、新規で作った部屋に関しては、もう少しきちんと告知をした方がいいと言われました。これだけ社員が多くてみんなで共用しているので、アクションを起こすと常に何らかの賛否両論はあります。100%正解はなかなかありませんね。意見をまとめていくことは難しさもありますが、その反面面白さもあります。意見をもらう度に、そうきたか!と常々思います。そういう意味では役員もメンバーも率直に意見を言ってくれるので、少しずつ良くなっているような気がします。
社員による社員のためのオフィス
会議が多いという同社では、会議室の数が社内外用全て合わせるとなんと100部屋を超えるという。このことからも、“会議室”は同社の中で最も重要度の高い施設といっても過言ではない。そんな会議室を中心に構成されるオフィスと、10周年を機に社員が初めて自主的に立ち上げたプロジェクトによってできた二つの部屋とはどのような空間なのだろうか。
野長氏:会議室は全て、執務室の窓側に設置しています。これは業務効率上の理由で、六本木ヒルズは窓がすごく広いので、夏は暑くて冬は寒いという状況なんです。体感温度は個人差が出てくるので、それならば執務室よりは会議室の方を窓側にまとめよう、ということになりました。そういった配慮をすることで執務室の機能を上げるように考えています。
2012年10月頃にできた12-14会議室に関しては、代表の田中の考えをベースにドラフトし、当時の社長室長とも意見をすり合わせながら作りました。その後2013年4月頃に作った13Fの執務スペース奥のオープンなミーティングスペースに関しては、当時のゲーム事業のトップから会議室が足りないから作ってほしいということと、様子が分かるようにオープンな方がいいという要望があり、それならゆったりとした雰囲気を出そうではないかということで、今の形になりました。これらは基本的にトップからの要望で、計画段階で社員の声も聞いているといったところです。
そして、創立10周年にちなんでオフィス環境も少し変えてみようということで、ゲーム部門や開発部門等からいろんな人が来て、プロジェクトチームを発足したのですが、そのプロジェクトに参加していない人からも「何か楽しそうなことやってるね、じゃあ入り口のサインを作ってあげるよ」という感じで協力してもらい、今回新たに「Quiet Room」 と「Brainstorming Room」の二部屋ができ上がりました。
「Brainstorming Room」は以前大部屋の会議室として使われていて、「Quiet Room」は使われていなかった部屋を有効活用できないかということで、新しい機能を付けて生まれ変わらせました。実質部屋を作るのには1~2日ほどしかかかりませんでしたね。昨日プレオープンだったので、早速一部の部署に使ってもらったんです。使い方は特に決めていないのですが、テーブル側に映像の入力画面があるので、プレゼンテーターが喋る様子を皆がソファに座って寛いで聞く、というイメージでしょうか。名目「Brainstorming Room」ということで、それができたと言ってもらえました。今後はみんなで新たな使い方を考えてほしいと思います。
家具は基本的には既にあるもので対処しています。「Brainstorming Room」の家具も他の部屋から持ってきたものです。イスの座り心地で社員から意見があったりもしますが、イスって正解がないですよね。替えるタイミングもあるかもしれません。それで劇的に何かが変わるのであればすぐに対処するかもしれませんが、それならば皆から貰っている要望をベースに、少しずつできることから直していく方がリーズナブルで、みんなと協力し合っているようで楽しいです。
今後取り組みたいオフィス環境づくり
大掛かりな改装は、今回の「Quiet Room」 と「Brainstorming Room」の新設で一旦区切りが付いたのだそう。新たに加わったこの二部屋が、今後社員によってどのように使われ、どのように変化していくのかが非常に楽しみな同社のオフィス。「素晴らしいサービスを生み出すために素晴らしい会社を作る」というビジョンの下、日々進化していくオフィス環境の先にはどのような空間が創造されるのだろうか。
野長氏:社内では10周年記念以外でも、オフィス環境を良くしようというプロジェクトチームのメンバーが、月に一度社内報で記事を掲載しているんです。例えば、六本木ヒルズの使い方が分からないという声もあるので、それを記事にしようということになったり…。社内には、ご要望があったらどうぞ、というアンケートボックスのような物も設置しているので、そこに皆さん好き放題いろいろと書いて下さるんです。
今回ボトムアップで部屋を作って、結構楽しかったんです。ただ、新しい試みなのでどうなるんだろうな・・・と思いながらも、この評価が良ければ今後もボトムアップでオフィス作りをしていけるのかと思うと、凄く楽しそうだなと思います。大変だとは思いますが。それぞれのフェーズでオフィスの考え方や使い方は変わってくると思うので、ガチガチに物を作るというよりは、そのフェーズごとに柔軟にオフィスが良くなっていけばいいなと思います。使われてナンボですからね。
Pick Up “ここが、グリーらしさ”
グリーの充実した社内制度、福利厚生、社会貢献活動から、ユニークなものをいくつかご紹介。
■こども対象プログラミング教室
主力事業であるゲームを活用した社会貢献の一つとして、NPO法人CANVASに協力し、インターネットゲームの作成に必要不可欠なプログラミングを子どもが簡単に学べる教室を開催。未来のエンジニアの育成と、子どもたちのプログラミング学習を通じた論理的思考の育成を目的としている。
■「富士山クリーンツアー」
企業市民として社会に貢献することを重要なミッションとして考え、その取り組みの一つとして、毎日新聞が主催する「富士山クリーンツアー」へ協賛し、富士山麓の清掃活動へ社員ボランティアの派遣を行なっている。2013年は3回実施し、公募で集まった約70人の社員が参加。2014年は4回も実施されたのだとか。
■最新モバイルデバイス購入促進制度/携帯月額費用補助制度
社員が新しいテクノロジー(スマートフォン、タブレットPC等)に触れることを促進するために、最新のモバイルデバイスの購入費用を補助する制度。また、それに対して業務上必要な社員について携帯電話の月額費用の一部を補助する制度が設けられているというIT企業ならではの制度。
■マッサージルーム
社員の健康維持、業務効率化を目的とし、格安料金でプロのマッサージ師による指圧マッサージが受けられるというもの。こちらもPC作業がメインとなる同社ならではの、社員に対する心遣いが感じられる。