2003年8月、オンラインダーツ専門通販サイト「S-DARTS」の運営に始まり、現在オリジナルダーツブランドを手掛ける他、ペット関連事業、海外事業など、幅広く事業を展開している『株式会社アールオーエヌ』。ECサイト運営を通してサービスの向上、WEBサービス開発、投資事業など様々なことに積極的にチャレンジし、顧客の利便性や快適性を追求している。また、日本のみならず海外にも土壌を置き事業展開を図るなど、多方面で躍進している。2010年2月に業務拡張のため事務所移転し、現在の埼玉県戸田市にオフィスを構えた同社のオフィス環境への取り組みに関するこだわりを、代表取締役社長 中村純氏に伺った。
なぜオフィス環境に投資したのか
今回が3度目の移転となる同社は、前回の約5倍の広さとなるオフィスを構えた。幅広く事業を展開する中で、オフィス環境変革に取り組んだきっかけや背景とはどのようなものだったのだろうか。
中村氏:創業当初より、発送機能まで含めたフルラインでのネットショップ運営を行ってまいりましたので、事業の進展とともに増え続ける在庫の保管スペースに常に悩まされてきました。
こちらのオフィスに移転する前は産業機械メーカーの二階ワンフロアを全室間借りして営業していて、オーナーさんのご好意で駐車場に臨時の倉庫まで作っていただいたのですが、次第に手狭となりました。
そこで移転候補先を選定することになったのですが、どうしても外せない重要なポイントがありました。それは今後の事業拡大を見込んだ在庫保管スペースがある物件かどうか、また、当社業務を様々な角度から支えてくれている現状のパートさん達が今後も負担なく通える距離にある物件かどうかという2点です。
ここは築40年の倉庫で、長い間空いていることは知っていました。
最初は少し広すぎるのではないかと感じたのですが、広すぎるくらいの場所を借りたほうができることも広がるのではないか、という期待と、オフィスビルよりも倉庫をリノベーションして使う方が理想の環境を構築しやすいのではないかなという思いもあり、ここに決めました。
社員も当初から比べると増えましたが、どちらかというと商品の方が増えましたね。
また、移転後まもなく弊社初の新卒採用セミナーを行ったのですが、訪れる学生さん達の多くが新しいオフィス環境について非常に強い関心を持ってくれましたので、タイミングとしても良かったと思っています。
オフィス環境変革後の変化や反響
移転して4年が経過した同社のオフィス。竣工当時から4年間の軌跡を伺った。
中村氏: このオフィスにして最も良かったと感じているのは、社員一人当たりのスペースが非常に広くなって皆のびのびと仕事ができるようになったことですね。たまにレイアウトを変更するのですが、広さが十分にあるので業務を止めることなく色々試すことができます。
外からの見た目もかなり良くなりました。来社されるお客様にも大変好評です。また、ご近所の方にも何かと評判のオフィスらしいのですが、これは住宅街の中にありますからね。それでインパクトが強いのかもしれません。
お陰様で採用面にも良い効果が表れています。以前に比べ格段にやりやすくなったという感触があります。
また、移転前はこちらから取引先に出向いて商談をすることが多かったのですが、今は躊躇せずに外部のお客様を自社にご招待することができますね。働いている社員や実際の商品在庫を間近にご覧いただけるということも安心に繋がるのか、お陰様で取引も非常にうまくいっています。一般的に物販をやっている会社は在庫を網羅していないか、外部に物流機能を委託している場合が多いのですが、弊社は全部自社内に揃えております。そこも強みになっていると思いますね。
オフィスをご覧になったお客様に、若いオフィスはこういう感じなのだなとか、ベンチャー企業はこんな先進的なことをやっているのだなと思って頂けて、それじゃあ一緒にやりましょうか、となってくる部分もあるように思います。それもオフィスの力ですね。
執務スペースは社員一人当たりのスペースを極めて広く取っています。オフィスのいたるところにアイデアが湧くようなスペースを作りましたが、その一方でモニター2台の広々とした自席の方が仕事上効率の良い面もあり、通常は自席で作業する社員が多いですね。
私自身は自分の場所が決まっていた方が落ち着いて仕事ができると思っています。フリーアドレスにしても結局物が増えると固定になるのじゃないかと。それに、自分の好きな物に囲まれて仕事した方がいいじゃないですか。だから社員にもデスクに好きな物を色々置いていいよと言っています(笑)
色々場所を変えて仕事をするのは気分転換にはなりますけれど、やはり落ち着いて何かをするなら固定席があった方が良いという社員が多いですね。だからその分、固定席のスペースをうんと広く取ったのです。ただ、一方ででそういう気分転換スペースもちゃんとあるというのは非常に良いですね。会議室もフリーで使っていいよと言っているのですが、毎回同じ人が同じ席に座ったりして結局は準固定席みたいな位置づけになっています。
それから、以前は通路を挟んで大きく2つに執務スペースを分けていたのですが、これは正直お互いが遠くなりすぎましたので、今は1つにまとめています。お陰様でダーツ部門以外にも色々な部門を立ち上げることが出来たのですが、部門が異なり物理的な距離も遠いとなると、横のつながりも希薄になっていくような気がしたんですよね。せっかくのワンフロアですし、1つにまとめることで電話の取次ぎもしやすくなってかえって便利になりました。
社長席も最初はいわゆる社長室のような空間に隔離されていたのですが、やはり事業の現場に身を置いていたいという感覚もあって、今は社員と机を並べています。
リノベーションで生まれ変わった明るい倉庫
場所が決まってから完成まで、この広さで僅か8ヶ月ほどというスピード引っ越しだったそう。実質、2009年の11月末にプランが決まり、12月に工事が始まってから約二ヶ月で業務スタートとなった。築40年の倉庫を明るくリノベーションした同社の新オフィス空間とは。
中村氏:オフィスを作る時に、オフィスの本みたいなのをたくさん買って読んでみたんですよ。いろんなサイトも見て設計士さんを探したりもしたのですが、「みかんぐみ」さんの本を読んで純粋に良いなと思えたので、同社に設計をお願いしました。
みかんぐみさんには「アイデアが出やすい環境を作って下さい」とお願いしました。自由な発想を出やすい空間というか。
通路を約3メートルと広くとったのも、通路での立ち話から生まれるアイデアもあるだろうと思ったからです。
あと、壁の黒いところは全部黒板にしました、チョークも置いてあります。最初はトイレの壁も全面ホワイトボードにしてほしいとお願いしました。用を足しながら思いついたアイデアを書けるホワイトボードです。結局やめましたけど(笑)
そういうアイデアを社員とたくさん出し合いました。それから、リノベーション前の建物内部は非常に暗いイメージがあったので、明るくして下さいとお願いしました。
予算をそんなに多くとれない割には増改築する部分が非常に多く、そこをどう解決するかという点と、倉庫という素材をどこまで生かすのかという点が、最後まで残った課題でしたね。例えば床面は前の倉庫時代のまま使っています。
みかんぐみさんにご提案頂いたコンセプトは「公園」だったのですが、素晴らしいアイデアだと思いました。ブランコも公園には欠かせない遊具ですよね。働きながら遊び心も刺激される、クリエイティブな空間にして頂けたと思います。
エントランスを入ると、まずダーツや輸入雑貨などの代表的な弊社商品をご覧いただけるディスプレイ棚と簡易応接セットが目に入りますが、こちらの棚はオリジナルで製作頂いたものです。
会議室は、社内システムで確認できる空き状況と気分によって好きに使えるようにしました。竣工当初はミーティングテーマによって会議室を使い分けていましたが、今は内容に関わらず好きに使えます。
部屋毎に色や雰囲気を変えているのはデザイナーさんからの提案です。和室っぽいのを一つ作ってほしいという希望のみ伝えました。落ち着く感じがいいなと思ったんですよね。執務スペースもなるべく天然木を使用することによって、落ち着ける空間にしました。壁も白くしましたので、倉庫がとても明るい空間に生まれ変わりました。
今後取り組みたいオフィス環境づくり
社員が働きやすい環境整備、業務効率を常に考え有効的なスペース利用に取り組むアールオーエヌ。今後の事業拡大を視野に入れた同社のオフィス環境作りとは。
中村氏:まだ1Fしかリノベーションしていないので、2Fは倉庫時代のまま手付かずとなっています。
今後人が増えて事業部も増えてきたら、また違ったアプローチで2Fもリノベーションしたいと思っています。2Fをオフィス化する際は、適度なコミニュケーション濃度を維持するためにも、座席配置には気を配りたいと考えています。漠然としてはいますが、社員同士があまり散り散りにならないように、とりあえず部門ごとに固めていきたいと考えています。ベンチャーらしさというか、ぎゅっとしている凝縮感が良い効果をもたらすのではないかと思っていますので。
場所は広くても、みんなが集まって仕事をするような感じのオフィスを作りたいですね。天井も逆に低い方がいいのかもしれません。マンションの一室とか、ああいうスケール感の方がいいのではないかと。
とにかく今はこのオフィスで出来ることを色々と試している段階です。十分な広さを活かしつつも、チームの一体感は高めていきたいですね。
Pick Up “ここが、アールオーエヌらしさ”
■環境改善への取り組み
同社運営のダーツショップ「エスダーツ」にて始めたエコ企画。指定のダーツ用品購入につき10%を環境関連の基金や、団体、NPO、NGOに寄付、出資している。東京都環境局 「緑の環境募金」へ寄付した金額を毎月HP上で集計し、報告を行っている。
■MVP制度/「RON杯」
毎月、新入社員も含めた全社員対象のMVP制度があり、賞状、トロフィー、賞金が授与される。また、各部門、毎月様々な指標で競い合う「RON杯」もあり、毎月熱いチーム戦が繰り広げられる。
■「RON日報」
他とは一味違った日報内容だという、「RON日報」。一日の業務報告の他、入社初日から毎日、社長へ思っていることを提案できたり、ミニブログのような日記欄で同世代の社員と交流したりもできる楽しい作りになっているのだそう。それぞれ文章に個性が出る模様。
■社内交流
目標を達成した場合、部門単位で達成会が行われる他に定期的に行っているイベントは特にないそうだが、社員から出されたアイデアを積極的に取り入れて、地元のパートさんを含め家族ぐるみでバーベキューをしたり、ダーツバー貸切で忘年会をしたりと活発な交流が行われている。
Creator’s Eye みかんぐみ / 加茂氏
加茂氏:アールオーエヌ様からのご要望として、「社員全体の顔が見える空間」、「クリエイティブな空間」、「各部門のコミュニケーションができる場所」、「会社の一員として誇りの持てる空間」、といった条件がありました。部署同士だけでなく、社内全体のコミュニケーションを活性化するための空間にしたいとご希望されていました。元が倉庫という広くのびやかな空間なので、それを活かしながら各部署での活動、会議室、セミナー室など、それぞれに特徴のある環境にするプランニングとデザインを考えました。倉庫から事務所へのリノベーションなので、法規の面と構造の安全性の面、それとコスト面が最も大変な部分でしたね。
家具に関しては、空間イメージをご提案する際に同時に選定しました。事務空間は機能性を考えて、シンプルでありながら、自席で仕事をされる方が多いので居心地の良い家具を選びました。また、収納は量を考えて、間仕切りと自社製品の展示を兼ねた什器として、どのように配置したら機能的で効率的に使えるかを考えてオリジナルで製作しました。
オフィスを「公園」というコンセプトで計画して、集中、休憩、遊び、コミュニケーションといった様々な行為を受け止められるような、自由な要素を盛り込んだことが特に喜ばれましたね。また、遊び心もあって、オフィスらしからぬオフィスというところも気に入って頂けたと思います。自然光をできるだけ取り込んだ明るい空間になりましたので、元の倉庫からは想像できないほど劇的に空間を変化させることができてよかったと思います。