西新宿に位置する新宿アイランドは店舗やオフィス、住居、専門学校、広場という機能を併せ持つ複合施設で、敷地内にアートが点在し、植栽も多く寄せられている都心のオアシス的空間として親しまれている。このアイランドタワー内にオフィスを構える 『スタッフブリッジ株式会社』。「労働を感動へ」を理念とし、日本全国8カ所に加え業務委託としてミャンマーにも展開を広げる同社は、アパレル専門の人材派遣、人材紹介に加え、「東京ワークスコレクション」という東京ガールズコレクション公式の国内外ファッションブランドの求人サイト運営も行っている。
働くことの喜びや感動を多くの人に提供すべく事業を展開している同社のオフィス環境作りについて、常務取締役の北村哲司氏よりお話を伺った。
なぜオフィス環境に投資したのか
2013年2月に総合サイトがリニューアルし、翌月にはスマートフォンサイトがオープン。そして8月には東京オフィスがリニューアルとなるなど、社内での動向が大きく加速した年といっても過言ではないように感じる。人材派遣、人材紹介会社としてオフィス環境にこだわる理由とは。
北村常務:社員が増えてきたときに丁度隣の部屋が空いたので、よし借りよう、と。業務拡大のためのリニューアルでした。元々使用していた部屋は営業のみの執務スペースにして、新たに借りた一室を全てお客様スペースにしようと。廊下だけでしか行き来できない半面、逆に超防音ですよね。それが良かったんです。こちらでは面接もするので、ある程度カフェっぽくてもいいけれど、隣同士の声が聞こえないように各テーブルごとにある程度の距離感を設けたり、目線がクロスしないように段差を考えたりと…全体のバランスを物凄く考えました。また、大事な話をするときのために個室も一室設けましたが、こちらも完全に仕切られた空間にするのではなく、足元は見えるような作りにして抜け感を演出したりと、細かいところにもかなりこだわりました。
東京オフィスと大阪オフィスが立地の良い場所にあるので、基幹店、模範店にさせて頂いていますが、そこでのテーマは「人を呼べるオフィス」です。僕たちはスタッフの方に来てもらってなんぼの商売です。数多くある派遣会社、転職支援会社の中から選んで頂いて、なおかつ一時間足らずの面接時間で「ここで働きたい」と思ってもらわないといけない。そこでは人も大事だし、オフィスの環境も大事ですよね。しかも僕たちのターゲットが“ファッション業界で働く人”なので、オフィスがおしゃれじゃないと説得力がないですよね。
オフィス環境変革後の社内外の変化や反響
リニューアル以来、社内外の反響も大きいという同社。オフィス自体が広告となり、出入りする人たちのみならず、パートナーであるアパレル企業との関わり合いも生まれているという。
北村常務:お陰様で社員採用にも繋がっています。第一声で「おしゃれですね」「ここで働きたいです」と言って頂けるので、そこはすごく会社の利益的にもプラスになっていますね。お客様スペースも壁がなくてやりづらいとか隣がうるさいという声は全然ないですね。計画の段階ではいろいろとこだわってしまって大変でしたが、なかなか人材派遣、紹介会社でそこまで考えているところはないと思うので、逆にそこにはこだわりました。
また、東京オフィスと大阪オフィスにおいては、レンタルオフィスというのもやっています。うちのお客様(アパレル)は自社で会議室がないところが意外に多いので、そういうところに無料でお貸ししています。ぜひ面接や社員研修に使って下さい、と。大阪は立地も良いのですごくニーズがあります。来て頂いた時に「きれいなオフィスですね、これならいいサービスが提供できますね」と言って頂けるので、うちのブランディング向上にも繋がっています。お客様に近いと信頼関係も生まれるし、そこはオフィスの力ですね。有難いですね。
某アパレルショップを参考にしたオフィス空間
某アパレル店舗をオフィスデザインの参考にしたという同社。常務は自宅の家具にもこだわりがあるというほど家具がお好きだそうで、オフィス内の家具や小物も全て自身で選択したという。そのオフィス空間に見られるきめ細やかな配慮は、常務のお人柄そのものと見受けられた。
北村常務:木っていうのは優しさがありますよね。こういうロボットみたいな高層ビルで、開けたら木があると温もりがある。どれだけかっこよくてもクールすぎて冷たい感じだとちょっとつらいですよね。それでどんなのがいいかなと思った時に、床にも木をふんだんに使いたいなと。ここの4階って窓から木が見えるでしょう。グリーンが見えるのは凄くいいですよね。
空間デザインはテーブル、イス在りきで考えました。この家具を置きたいから空間はどうする、と。また、白を基調としつつ、木もあって…など、やりたいことをとりあえずばーっと言って、それを並べていって頂いて。今回設計を手掛けてもらった株式会社スペースデザインの宮坂さんに一番お願いしていたのは、「空間の広がり」と「遊び」がないとダメなので、あえて真ん中に無駄な空間を作ってもらったということです。面接と聞くとだいたい空間を区切ってしまう。物凄く広ければ別だけど、ここでそれをやると圧迫してしまうので、壁はなしでも、気密性がある程度保たれているという空間。配置や音を消し合うということに気を遣いましたね。それに女の子って完全個室で男と一対一ってこわくないですか?緊張しますよね。
今後取り組みたいオフィス環境づくり
2013年の8月にオフィスのリニューアルをしてから約1年半。今後取り組みたいオフィス環境づくりとは。
北村常務:実はもうすでに執務スペースが満席状態なので、東京オフィスも早ければ来年あたりには大きくしたいなと思っています。今の新宿アイランドに空きが出たら教えてとオーナーさんには言ってありますが、もしかしたらどこかに移るかもしれません。また、近々ですと次は名古屋オフィスを来年には引っ越す予定です。全体の売上も伸びてきているし、来年名古屋駅前が一気に再開発されるので、そこに入りたいなと実は現在交渉をしているところなんです。
Pick Up “ここが、スタッフブリッジらしさ”
■スペースを活かした社内懇親会
ちょっとしたパーティー会場にもなりそうなお客様スペースでは、夜に社内懇親会を行ったり、常務自らギター演奏を行ったりもするのだとか。照明の調光ができるため、部屋の雰囲気を変えて気分転換をしているそうだ。今後はお客様をお呼びして、商品の販売会などもする予定なのだとか。
Creator’s Eye 株式会社スペースデザイン / 代表取締役 宮坂 優子 氏
宮坂CEO:今回のクライアントさんはすごく自分の意見をお持ちで非常にセンスが良く、ほとんど頭の中ではイメージができていらっしゃったので、それを形にしました。家具がお好きな方なので、一緒にお仕事をしていて楽しかったです。すごく時間をかけて大変でしたけれど、やっているうちに空間がどんどん良くなっていくのがわかりました。
最も苦労した点は、“本物の木”を使いたいという点でした。ここはオフィスビルで消防法も厳しいところなので、そこをうまくクリアするという面で素材の選定などが大変でした。普段なら木目調の塩ビタイルのような素材を使用するケースが多いのですが、ご要望に沿えるようにできるだけ本当の素材を使ったり、不燃の塗料を塗るなどして工夫をしました。あとは壁を作る時に薄っぺらくならないよう、塗装の質感にもこだわりましたね。また、冷たい白ではなく、「やさしい白」を意識して、全体的に装飾しすぎず、こだわっているけどやりすぎないように見えるよう努めました。ターゲットが女性なので、やわらかい雰囲気で一回来ただけで印象に残るような空間を目指しました。