ソーシャル・ネットワーキング サービス「mixi」を始め、ひっぱりハンティングRPGゲーム「モンスターストライク」、Web業界に特化した求人サイト「Find Job !」など、幅広く事業展開を行っている『株式会社ミクシィ』。2014年10月には「モンスターストライク」が一周年を迎え、12月には世界累計利用者数2000万人を突破し、今やその勢いは止まることなく北米や中国・台湾・韓国等の海外に向けてもサービスを提供している。
「全ての人に心地よいつながりを」をミッションに掲げ、世の中に新しい価値を生み出し続けている同社は、今年2014年に設立15周年を迎え、6月には社長交代をして、再成長を行っている。モンスターストライクでは、日本だけでなく海外展開も進めている。積極的に新規事業を展開している同社は、継続的な事業展開を行うために社員一人一人が『ミクシィグループ』で働くことに誇りを持ち、それぞれの能力を最大限に発揮できる環境整備に特に注力している。その具体的な取り組みについて、人事部企画グループ 岡麻由美氏、広報IRグループ 根岸久美子氏よりお話しを伺った。
なぜオフィス環境に投資したのか
社員が働く環境を整えることで、「心地よい環境から生まれる快適なコミュニケーション」を実施している同社。2011年4月に現在の住友不動産渋谷ファーストタワーへ移転し、まもなく丸4年を迎える同社がオフィス環境に投資する背景を探った。
岡氏:以前原宿にいた時は、オフィスが5フロアに分かれていまして、コミュニケーションがなかなか取りづらいという状況がありました。社員が増えてきたこともあり、現在の住友不動産渋谷ファーストタワーへ移転をしたことで、移転時の在籍人数の約2倍を収容できるスペースが確保できたため、現在は3フロアで機能させています。一番大きな目的は社内外のコミュニケーションを活性化させることでしたので、それを促進させるためのオフィス空間というテーマで作られています。
根岸氏:私たちは対面のコミュニケーションを非常に大切にしています。提供しているサービスにおいても、例えばソーシャル・ネットワーキング サービス「mixi」では仲の良い人とのコミュニケーションを楽しむだけでなく、コミュニティを介して共通の趣味や関心を持つ人々との繋がりができます。スマホゲーム「モンスターストライク」では一緒にいる友だちと協力してワイワイ楽しめることが特徴です。
そういったコミュニケーションを考えている会社だからこそ、サービスを生み出す自分たちがいる社内にも反映させていこうということですね。
オフィス環境投資後の変化や反響
変化の軌跡が積み重なっていき、“ミクシィらしさ”となって定着しつつあるように見える。オフィス環境を活かした制度面での取り組みも徐々に充実しつつある中で、社内外からはどのような反響があったのだろうか。
根岸氏:会議室の壁が一面全てホワイトボードになっているのが非常に便利で、社員は皆喜んで活用していますね。議論の内容はもちろん、ちょっとしたアイデア書きにとても便利です。来客用の会議室だけでなく、執務スペース内の会議室にもあり、社員もフル活用しているのですでに黒ずんできているところもあるほど頻繁に使われています。
また、お客様からは、エントランスが広く、温かみがあっていいですねとよく言われます。床が生の木なので、結構驚かれますね。会議室へお通しすると、扉に痕(指紋)がつけられるということで面白がられます(笑)。足あとや手あかも会社の歴史となって刻まれていくのです。
岡氏:基本的に数名で会議をする時は言葉で話しただけだと認識のズレが生まれます。共通認識を持てるように可視化して共有するようにしています。その際にホワイトボードが大活躍していますね。プロジェクターも全会議室に設置されていますので、資料やサービスの実際の画面をホワイトボードに映して使用しています。このプロジェクターは前のオフィス時代にとった社員アンケートで特に要望が多かったので取り入れたんです。
資料を投影し、しかもホワイトボードなのでそこに書いてということができるようになったので、とてもスムーズに会議が進むようになりました。
「対面コミュニケーション」を大切にするオフィス
現在3フロアで運用している同社のオフィス。コミュニケーション活性化のために同社では6F~8Fのうち、中間の7Fが総合受付・会議室エリア・休憩エリアとなっており、移動もしやすいように考えて設計されている。さらに、そこには別部署の社員同士の“偶然の出会い”の機会を作るという狙いも込められているそうだ。“偶然の出会い”から生まれるコミュニケーションの場とは、どのような環境なのか。
岡氏:前回のオフィスはポップな印象がありましたが、今回は全体的にシックで落ち着いた印象になっています。コミュニケーションは人の温かさと通ずるものがあるので、色を減らしつつなるべくナチュラルな雰囲気で、木の素材を多く使用することを意識しました。エントランスの床材も木を使っているのですが、多くの方が訪れたという証拠になるようにあえて痕が残りやすい素材を使っています。一見手あかがついて錆びついたように見える会議室とセミナールームの扉もそうですね。これは会社の成長と共にオフィスも歴史を刻んでほしいという想いから、あえて指紋が残るような仕上げにしてあります。汚れや傷みが全て“味”になっていくように…という思いが込められています。
根岸氏:弊社ではエンジニアが多く、彼らが働きやすい環境にするためにも様々な工夫をしています。できるだけリラックスして開発に集中してほしいので、腰に負担がかからないようなイスを取り入れたりしていますね。イスがリクライニング形式になるため、見上げた時に蛍光灯の光が視界の邪魔になるという声が多かったのと、一日中黒い開発画面を見ているということもあり眼が疲れやすくなるので、それを少しでも軽減するために光避けのためのカバーを提案したところ大好評で、エンジニアの一部が使用しています。また、それがあることで集中しやすいみたいです。
執務スペースは窓側のスペースをほぼ全てミーティングスペースとして確保していて、それぞれのデスクが囲まれるような形で設置されています。壁やパーティションが少ないので、コミュニケーションがとりやすいですね。また、パッと見てプロジェクトの進捗が、分かるように個人個人の作業状況を移動型のホワイトボードに書いて共有したりと、ここでも皆よくホワイトボードを活用させていますね。
この窓側のミーティングスペースの一角には「ミニコラボ」という社員の休憩スペースが設けてあります。動線上にあるので使いやすく、違う部署の社員同士で情報共有をしたり、ちょっとしたミーティングをしたり、ここで作業する者もいます。社員が購入した書籍があるライブラリーも兼ねています。
「コラボレーションスペース」と呼ばれる場所は社員の休憩スペースだけでなく、ミーティングや社外の方を招いて勉強会をする時などにも使われます。部屋の奥に畳の小上がりになったスペースとソファ席が設けられていて、気分によって場所を選ぶことができます。
今後取り組みたいオフィス環境づくり
移転後4年が経過し、事業もモンスターストライクが大きく成長し、2014年6月には森田が社長に就任。大きな転換期を迎えている同社。ハード面の環境変化がソフト面をうまくサポートしているように見受けられるが、それは何より社長を始めとする役員が大変「社員想い」であることが起因しているのではないか。人を喜ばせることが大好きな社長の強い想いが詰まった同社のオフィスの今後の改革計画とは。
岡氏:社員が何か新しいことをやりたいという声を挙げたときに、それに対してきちんと適切に対応できるようにしたいと思っています。いろんな手の挙げ方に対して応えられるような福利厚生を作っていきたいですね。
コミュニケーションを扱う会社ですので、社長をはじめ人を喜ばせることが好きな社員が多いです。そこがサービスにも表れているのだと思います。ユーザーの皆さまを喜ばせたいし、社員に対しても頑張ってくれていたらそれに対して貢献したいし、みんなに楽しく仕事をしてほしいという思いがあるようなので、今年に入ってから特に気合が入っているように感じます。
根岸氏:今後、モンスターストライクでは海外展開もより一層積極的に展開していく予定ですので、成長に合わせて人員も増えてくると思います。社員が増えるとコミュニケーションも今まで以上に大切になってくるので、今ある環境をより活かしたいですね。現在うまく活用できていない場所を今後どのようにコミュニケーションを活性化させられるような場所にできるか、人事を含めて話し合っています。より無駄を無くして、一層人と人とが繋がりやすくなる場を考えていきたいと思っています。
Pick Up “ここが、ミクシィらしさ”
同社では社内制度や福利厚生がただ充実しているだけでなく、いずれもきちんと実用されているということが特徴だという。ちょっとした意見も伝えやすい雰囲気なので、社員の声が反映されて実際の制度になった例も多いのだとか。そんな同社で実用されている社内制度と福利厚生をいくつかご紹介したい。
■キャリアチャレンジ
「ミクシィ・キャリア・チャレンジ(MCC)」という、希望する仕事や新たなミッションにチャレンジしたい社員と募集している部署とのマッチングによる社内公募制度。目安箱のような物に近く、直接自分の上長を通さずに他部署へチャレンジできる。募集部署と応募者が面接をし、合致すると異動成立となる。募集を開始してから面接までおおよそ一か月ほどだそうだが、猶予期間がきちんとあるので、引き継ぎもきちんと行うことができる。四半期に一度行っており、社員が持つそれぞれの能力を最大限発揮できるように配慮されている。
■食育
会社にいる時間を少しでも気持ちよくリラックスして過ごしてほしいということと、健康的に過ごしてほしいという社長の意向により、社内で提供している食べ物は非常に健康志向なのだとか。お昼時はメニューのラインナップが充実している。例えば、「オフィスおかん」の体に良いお惣菜や主菜、サラダランチ、パンなども販売している。飲み物類も充実しており、6Fと8Fに設置されたカフェコーナーでは、おいしいコーヒーの他スープ類なども置かれている。コーヒーなどは基本的に無料、サラダランチには補助があり、お惣菜なども100円程度で利用できるとあって、社内でも好評なのだそう。そして有料でサプリも置いてあるため、その時々の自分の体調に合わせて選ぶことができるのだとか。今後も社員の健康を考えたメニューが増えていきそうだ。
■社内交流会
半期に一度、ミクシィグループ全体の動向や近況をお互いに知る機会として、各事業の総括や今後のビジョン、戦略などを全社員に共有する納会がある。ベストグループ賞、ベストエンジニア賞等の社員表彰も行われる。年末には「Year End Party」という全社員が集合するパーティーが催されている。ビンゴ大会などもあり、グループ会社のメンバー全員で交流を楽しむことができる。社内交流会は、今後もますます充実していくだろう。