2007年11月の設立以降、「モバイル」と「ソーシャル」に特化した挑戦を続け、モバイルソーシャルゲームデベロッパーとして今なお急成長を遂げている『株式会社ポケラボ』。日々変化と進化を繰り返すモバイルインターネット領域において、どこよりも早くスマートフォン向けゲームアプリケーションの自社開発に特化しただけでなく、その後も国内有数のエンターテインメント企業と共に企画・開発を進行。さらには、国内外の様々な企業と協業して「Pokelabo Apps(ポケラボアプリ群)」を展開し、今や国内だけでなく世界138カ国へとタイトル提供の範囲を広げている。
そして、「ソーシャルアプリで世界と人を変える」という存在意義を掲げ、自分たちが創ったゲームを通じて世界に新たな文化を創造していこうと弛まぬ努力と挑戦を続けている同社。そんな同社のオフィスコンセプトは、“TOY FACTORY”。新たな文化を創造するためのスタート地点でもあるそのオフィス環境について、代表取締役社長の前田悠太氏にお話を伺った。
なぜオフィス環境へ投資したのか
同社は2013年2月に現在の港区六本木にオフィスを移転。2007年に秋葉原で創業して以来、今回で5度目の移転となる。日々目まぐるしく変化するインターネット業界においては、ただその変化を追うだけでなく、時代を読み、それに伴い自らも変化をしていくことが非常に重要になってくる。同社にとっては、その変化の中に“働く環境”も含まれているようだ。そこで、今回同社が5度目の移転という環境投資に至った理由について詳しく伺った。
前田氏:一言で言うと、「物づくりの会社・クリエイティブの会社だから」ということに尽きますね。モノづくりの会社で、クリエイティブな仕事をする人たちを集めるということがこの場所の引力じゃないですか。例えば、我々のパートナーも基本的にはいろいろとモノを作るサポートをしていただく企業様が多いんですけども、そういう方々に来ていただいた時にも、百聞は一見に如かずで、この空間に入った瞬間にポケラボの印象を持っていただけるようにするということが、パートナーシップを潤滑に進める一つの引力だと思っています。
あとは、採用ももちろんそうですよね。初めてオフィスに来た方に、ポケラボはどういう印象だったかを考えてもらった時、プロダクトかこのオフィスが浮かぶとは思うんですけど、多分このオフィスのイメージの方が一番最初にパッと出てくると思うんです。その“ポケラボらしさ”っていうのがオフィスでちゃんと出せることによって、「こういうクリエイティビティのある環境を良しとしてくれる方々を我々としても求めていますよ」というPRになるというか、一つのメッセージとして伝わったら、お互いWin-Winだなと思っています。
また、港区の方に出てきた理由としては、単純にワンフロアにこだわっていたからなんです。2007年の創業当初は秋葉原にいたのですが、2011年11月に溜池に出て来る前のタイミングで社員が100名を超えていたので、100名全員が一緒に入れるところが秋葉原にはなかったということもあり、溜池の方に移転を決めました。また、溜池のオフィスもいっぱいになってきた時に、同じようにワンフロアで全員が一緒に入れる場所を探していたところ、今のアークヒルズ仙石山森タワーが丁度建ったばかりだったので、森ビルさんにいろいろとサポートいただき、移転に至りました。何より、「ワンフロアで顔が見える」というのが非常に重要なので、パーティションも低くして、私が立つといつでも全員が見渡せる環境にしています。
オフィス環境変革後の変化や反響
モバイルソーシャルゲームデベロッパーとして様々なアプリを世界に向けて発信し、より多くのユーザーに“驚き”と“感動”を提供していくため、同社では自分たち自身も今の環境を楽しみながら業務に取り組むことを日々心掛けているという。環境が変われば、それに伴い働き方も自然と変わってくる訳だが、移転後、そんな同社の社員たちに変化はあったのだろうか?周囲からの反響についても併せて伺った。
前田氏:社員の働き方の変化で言うと、これは少しビルの話になってしまうのですが、この辺りは近場にあまりご飯を食べるところがないんです。大きなビルなのですがご飯を食べるところが3つしかなくて、値段も結構するところですし、みんな使わないんですよね。なので、お弁当屋さんに来てもらうようにしたんです。そこでは常時30種類くらいのお弁当を出してもらうようにしているのですが、以前に比べて社内でお昼を済ます人が増えたなと思います。これは良くも悪くもなんですけどね(笑)。ただ、その分社員同士のコミュニケーションが活性化したように思います。あとはこのビルの中にジムがあるんですけど、そのジムを出勤前や勤務後に利用している人も多くなりました。皆時間をうまく使っているのではないかと思います。
それと、弊社はフリーアドレス制ではないのですが、席替えを凄く頻繁に行っているんです。これは物理的にプロジェクトの人員構成が変わったりするというのもあるんですけど、業界特性として“変わり続ける”ということが非常に重要なので、意識的に席替えを推奨しています。「変わることが普通だ」という認識を持つことが本当に大事なので。ただ、席替えが多いと誰がどこに行ったかが分からなくなってしまうので、席のところに名札を付けているんですよ。いろいろな変化に合わせて、みんなでそんな小さな工夫をしたりもしています。
また、今も新卒・中途問わず採用の方は行わせていただいていて、私も最終面接には全職種必ず出席させていただいているのですが、その日々の採用のときにほとんどの方が、「凄く良いオフィスですよね」とか、割とこのオフィスから受けられるイメージをいろいろと語ってくれたりすることが多いので、やはりインパクトがあるんだなと思いますし、本当に意味があったなと思いますね。
あとは、こういう取材に来ていただいたりした際に、「ポケラボ君の前で写真を撮らせてください」とか、「あの大きなロゴの前で写真を撮らせてください」とか、いわゆるPR的な一つの“広報ツール”としてオフィスが活用できているというのは実感として凄くあります。
独自のエンターテイメントを創出するオフィスのこだわり
2015年で創業8年目を迎える同社は、今回の5度目の移転で見事に「ポケラボらしさ」を全面に表現したオフィスを完成させた。至るところでマスコットキャラクターの“ポケロボ君”が遊んでいるこのオフィスでは、まるで自分がゲームの世界に入り込んでしまったかのような錯覚に陥ると同時に、そのエンターテイメント性の高さに自然とワクワク感が込み上げて来る。そんな「ポケラボらしさ」がぎっしり詰まった“TOY FACTORY”というコンセプトに込められた想いと、遊び心溢れるオフィスのこだわりについて伺った。
前田氏:今回は結構細かいところにまでこだわりました。例えば、大きなところで言うと“ストーリー性”ですね。執務エリアから来客エリアの床に見える縞々は工場のベルトコンベアーをイメージしています。マスコットキャラクターであるポケロボ君の部品を運んできて途中で組み立て、最終的に大きなポケロボ君を作っているという一つのストーリーが“TOY FACTORY”というコンセプトには詰まっているんです。名は体を表すじゃないですが、オフィスも体を表すと思うので、「みんなでこのポケラボを育てているんだ」というストーリー性は凄く大事にしています。
2つ目は、“明るさ”のギャップ感ですね。例えば、来客エリアの壁も全部ガラス張りになっているじゃないですか。明るいということは凄く大事なことだと思っているんです。それに対して、エントランスは暗かったと思うのですが、実は2つ目のオフィスからずっとそうしているんです。これは映画館の上映前の照度なんですね。映画館のBeginningというか、“物語の始まり”がテーマなんです。そして、エントランスのドアを開けると、この“TOY FACTORY”というストーリーが始まる…という、ゲームっぽさを大事にしています。言わなきゃわからないんですけど、言ったら「なるほどな!」と思ってもらえるくらいのサプライズ感がいいなと思っていて。
弊社ではコアバリューにも掲げているように、「ユニークであり、サプライズである」ということが大事だったりするのですが、ポケラボらしさっていうユニークさですと、「おっ!」と思ってもらえるサプライズを与えるということが割とポケラボの性格だと定義していたりするので、そういうこだわりは大事にしていますね。
結局我々はエンタメコンテンツを作っている会社なので、ユーザー様に期待してもらえるっていうのは、その裏側で、いい意味で期待を裏切ることができるサプライズがあるからだと思っています。よく思うのが、任天堂さんとかって凄いじゃないですか?任天堂さんが凄いのは、フランスに行ったってロシアに行ったってドイツに行ったって、どこのゲームキッズでも、最初に「ピコン」っていう音と同時に出て来るあの任天堂さんのロゴを見るだけで、みんなワクワクってするんですよね。それは、この後に始まる何かを期待しているからじゃないですか。みんな、いい意味で期待を裏切られた経験が任天堂さんにあるから、またそういう期待をするんですよね。これが凄いことだと思っていて、自分たちもそうなりたいという想いも含めて、小さなことかもしれないですけどオフィスにもそういう想いを乗せたりしています。
ディテールはほとんど社員の意見ですね。家具とかもそうですし、カーテンや壁の素材についても社員がいろいろと話していましたが、有志のチームの子たちがその意見を全て取りまとめてくれました。みんながそれぞれにディスカッションをして決めたようです。最終的にほぼ社員の意見のまま進めたので、ディテールについてNGを出した点はほとんどなかったですね。あえて言うと、今もよくわからないんですけど、廊下に置いてあるオブジェの様なものには何の意味があるの?とか、そういうのはありましたけどね(笑)。
今後取り組みたいオフィス環境づくり
今や私たちの生活の中で必要不可欠な存在となっている「スマートフォン」。この無限の可能性が広がる市場の中で、ポケラボは自分たちだからこそできる挑戦を続け、世界中の人々に“驚き”と“感動”を提供しようと日々邁進している。創業から8年で250名を超える規模にまで成長を遂げた同社は、今後も「ソーシャルアプリで世界と人を変える」という創業理念のもと、更なる飛躍を遂げ、世界に新たな文化を創造していくに違いない。そんな同社に、今後取り組みたいオフィス環境づくりについて、最後に伺った。
前田氏:エンターテイメントを扱っている会社なので、オフィスの中にモニターをもっとたくさん増やしたいですね。今作っているものだとかプロジェクトのやっていることを伝えようと思った時に、言葉や文章で説明できないことが凄く多いので、できる限りいろんなところにモニターを設置して、みんなに“見える社内広報”の機会を増やしたいなと思っています。この社内広報というのは、組織が大きくなっていくこの過程で凄く重要なポイントになっているんです。例えば、プロジェクトが今10個あったとします。そうなると、Aのプロジェクトの人はDのプロジェクトの進行を知らないということが割と普通になってしまうんですけど、それによる組織としての損傷って凄く大きいんですよね。知っていればその担当の人に聞いてすぐ終わったものが…みたいなことが凄くたくさんあったりとか。しかも、IT業界は日進月歩で変化が凄く早いので、余計に影響が大きいんです。だからこそ、社内広報を圧倒的に強化したいと思っています。また、各事業部ごとに毎週月曜日には全体朝礼、毎月最後の金曜日には金曜会という全体ミーティングを行っているのですが、そこでもきちんと発表をさせています。それでもやっぱりまだ全然浸透していないと思うので、もう日常的にオフィスのいろんなところで各事業部、各プロジェクトがやっていることを見せられるようなサイネージやフォーマット、ポータル等があればいいなと思っています。
あとは、SFチックなことをもっと取り入れたいですね(笑)。例えば、網膜センサーとか。要は、今ってカードキーでセキュリティー管理を行っているじゃないですか。あれって凄いアナログだなと思っていて。誰が通ったかっていうことも勝手にサーチして把握をしていて、何にもせずともちゃんとドアが開くとかっていう、もっとハイテクな未来型の…まぁ新しい物好きっていうだけなんですけどね(笑)。そういうことには凄く興味があったりします。
Pick Up “ここが、ポケラボらしさ“
■部署間による逆提案制度
アニメーション等を作成しているクリエイティブ事業部が主導となり、部署間を跨いだ様々な提案をし合うことが同社では日常的に行われているという。例えば、新卒の採用を行う中で必要になる“新卒採用ムービー”について、今までは外部に発注をしていたそうだが、ある時人事部ではない他部署から、「うちの部署で作ったらこんなに面白いものができます!」という逆提案があり、実際に作ってもらったら物凄くユニークでクオリティーの高い作品が出来上がったのだとか。このムービーの出演者が全員同社の社員というのも驚きだが、何より実際に同社で働く社員が作ったからこそ“ポケラボらしさ”が色濃く表現されており、非常にユーモア溢れる作品に仕上がっている。内容については新卒向けのムービーではあるものの、一つの“作品”として誰が見ても楽しめる内容になっているので、是非多くの方にご覧いただきたい。
<2016年度新卒採用ムービーはこちら> https://www.youtube.com/watch?v=PRSxwlo8TBo
■充実した教育制度
海外にも事業を展開している同社では、グローバルにサービスを展開できる業態だからこそ、社員にもそれに備えて準備をしてほしいという想いから、「英語研修サポート制度」を取り入れている。スカイプを使った1回25分のレッスンが毎日無料で受けることができるため、ランチの合間や就業後に気軽に利用する社員も多いのだとか。その他にも同社では社員教育に力を入れており、自分に必要だと判断した教育に各自で投資をしてもらうため、一人年間10万円の教育予算が出るのだそう。
Creator’s Eye 株式会社SIGNAL / 代表取締役社長 徳田純一氏、新海一朗氏
今回ポケラボ様からいただいたご要望は、将来のリクルートに役立つようエンターテイメント性を持ちあわせた、働きたいと思われるオフィス空間でした。一方で、若い会社故にポケラボらしい働き方をこれから浸透させていきたいというフェーズでもあったため、執務空間に関しては自由すぎる遊び場のような感じではなく、“働く場”という明確な切り分けをしたいというご要望もありました。
ポケラボの場合、ゲーム製作のチーム編成をラインと呼んでいて、一つのプロダクトに関係するメンバーを一つのデスクの島に集めるという働き方をしていました。そのため執務エリアはそのラインの働き方を活かすレイアウトを基本にしつつ、来客エリアではラインを“工場の生産ライン“と捉えて、ポケラボのキャラクター、ポケロボ君を製造する“Toy Factory”というコンセプトを基に、遊び心のある大胆なデザインを展開しました。
当該ビル(アークヒルズ仙石山森タワー)は国土交通大臣の認定を受けているため、一般法規に加えて計画上留意する点があり、そのルールが複雑でなかなか理解し難い部分があったので、部屋のサイズや通路の取り方などレイアウトに苦労しました。ただ、その特性を逆に利用して生まれたアイデアが来客エリアの“Toy Factory”というコンセプトでしたので、結果的に面白い試みになったと思います。
このプロジェクトはスケジュールがタイトでしたので、プランニングやデザインとほぼ同時進行で家具の選定も行いました。ポケラボカラーに合うポップな色味やデザインをベースに輸入品や造作家具など納期のかかる物を先行して選定し、納期やプロジェクト予算に合わせて、残りの家具も選定しました。
社内外からは、来客エリアのインパクトある空間が特に評判が良いと伺っています。実際にオフィスオープンの日に社員の方のダイレクトな反応を覗き見していましたが、たくさん写真を撮って喜んでいる姿がありました。執務エリアでは短期間での人数増が見込まれていましたので、そのバッファー部分を残したプランニングをしました。そのため予想以上の人数増ではありましたが、対応できたことは良かったと仰っていただけたので、安心しました。